福岡・けやき通り & 箱崎の小さな本屋

Independent Small Bookstore in Fukuoka since 2001

ホーム > イベント&展覧会情報 > 【終了】5/11(金)『関門港の女沖仲仕たち』 発売記念トークショー「林えいだいとは何者だったのか?」

【終了】5/11(金)『関門港の女沖仲仕たち』 発売記念トークショー「林えいだいとは何者だったのか?」

 昨年、惜しまれつつ世を去った筑豊の記録作家、林えいだいさんの写真記録『関門港の女沖仲仕(おきなかし)たち』が、この3月に新評論から発売になりました。えいだいさんが若い頃撮った「女ごんぞう」と呼ばれる女性の港湾労働者の写真を自ら編集したもので、 まとまった記録がない関門の女沖仲仕について、その実態を伝えるたいへん貴重な本です。

 この本の発売を記念して、林えいだいさんの支援者だった大分大名誉教授の森川登美江さん(本書の後記を担当)とRKB毎日放送ディレクターの西嶋真司さん(本書の序文を担当)をお迎えしたトークショーを5月11日(金)に箱崎店で開催いたします。

 司会はこのたび『評伝 石牟礼道子』(新潮社)で読売文学賞を受賞された米本浩二さんにつとめていただきます。会の冒頭では、晩年のえいだいさんの活動を追い続けた記録映画『抗い』を監督した西嶋さんの編集による 映像作品も紹介する予定です。

 北九州の公害運動をはじめ、朝鮮人強制労働、炭鉱・港湾労働、戦争の実相など、歴史に翻弄された人々をテーマに記録を残し続けた林えいだいさん。彼が記録作家になった背景には、反戦思想を貫き、警察の拷問を受けて命を落とした父親の存在があったといいます。戦時下、国家権力に抗うことがいかに悲惨な結果を招くか、国家によって肉親を奪われた幼少時の記憶が、彼を虐げられた人々の救済と鎮魂へと駆り立てていったのです。

  「記憶されない歴史は繰り返される。権力に棄てられた人々や忘れ去られようとする名もなき人々の証言を掘り起こし、記録することが自らの使命だ」と語っていた林えいだいさん。国家権力が再び暴走を始めようとしている今日、生涯をかけて「抗い」続けた林えいだいさんの活動を知る絶好の機会です。ふるってご参加ください。

『関門港の女沖仲仕たち』 発売記念トークショー
「林えいだいとは何者だったのか?」

日時:2018年5月11日 (金) 19:00スタート(18:00開場)
会場:カフェ&ギャラリー・キューブリック
(ブックスキューブリック箱崎店2F・福岡市東区箱崎1-5-14
JR箱崎駅西口から博多駅方面に徒歩1分)
出 演: 森川登美江(大分大学名誉教授)
    西嶋真司(RKB毎日放送ディレクター)
聞き手:米本浩二
参加費:1500円(1ドリンク付・要予約)
*懇親会有り
(参加費1500円・カレー&BKベーカリーのパン&2ドリンク付・要予約)
*18時~19時 開演前にカフェの食事メニューをご利用いただけます。

予約先:①メールでお申し込み
hakozaki@bookskubrick.jpまで、件名を「5/11トーク予約」として
[1.お名前、2.参加人数、3.ご連絡先電話番号 4.懇親会参加有無]
をご記入の上お申込みください。
当店からの予約確認メールをもってお申し込み完了といたします。
※返信がない場合はお電話にてお問合せください。

②peatixというサービスからも簡単に予約が可能です。
こちらの「チケットを申込む」ボタンからお申込ください。
参加費は当日受付でお支払いくださいますようお願いいたします。

 

『《写真記録》関門港の女沖仲仕たち 近代北九州の一風景』

林えいだい 著  新評論  2160円(税込) 2018/3/19発売

魂の作家が遺した唯一無二の記録!約150点の貴重な写真を中心に、港湾労働の実態と女たちの近代を鮮やかに描き出す

福岡県北九州市門司区、関門海峡を望む港に、かつて「女沖仲仕【おきなかし】」ないし「女ごんぞう」と呼ばれる女性の港湾労働者たちがいた。本書は、昨秋惜しまれつつ世を去った福岡出身の記録作家・林えいだいが、一九七〇~八〇年代にかけて彼女たちに取材した記録である。機械化が急速に進みだす一九六〇年代まで、貨物船からの荷揚げと荷下ろしは人力に頼っていた。船底の荷を網にすくい入れて甲板に引き揚げ、海上の艀【はしけ】へ移す。船中でこの一連の荷役を担うのが沖仲仕である(桟橋に着いた艀から荷を陸揚げする人々は「陸仲仕【おかなかし」と呼ばれた)。関門港の北九州側の門司や若松では、明治期から多くの女性が沖仲仕として働いていた。
一八九五年、後日デンマークの婦人参政権運動の主導者となるヨハンネ・ミュンターは、門司で石炭荷役に従事する女沖仲仕の姿に男女平等の理想像を見た。一九六六年に来日したサルトルとボーヴォワールも、彼女らに会いに門司を訪れ、男と全く同じ仕事をこなす様子に「世界に類を見ない」と目をみはった。彼女らは男でも音を上げる苛酷な労働に耐え、筑豊炭田と北九州工業地帯の繁栄、ひいては戦後日本の高度経済成長を下支えした。だが六〇年代以降の「エネルギー革命」と技術の進展にともない、やがてうちすてられていく。林が取材したのは、港から消え去る寸前の最後の「女ごんぞう」たちの姿である。心身を酷使し、時に瀕死の重傷を負いながらも、「沖での仕事が生きがい」と語る女たち。林はその強さと威厳、底抜けの明るさに圧倒され、シャッターを切り続けた。「港はもう、彼女たちを呼んではいない」(林えいだい『海峡の女たち―関門港沖仲仕の社会史』葦書房、一九八三年)。
だが、職業意識に徹した誇りと自負、たくましさと開放的な笑顔は、林の手で永遠の命を与えられた。(編集部)*「沖仲仕」や「ごんぞうは、現在では差別表現とみなされる場合があるが、本書では歴史的呼称として用いる。

 

林えいだい(はやし・えいだい)

1933年12月4日、福岡県香春町生まれ。ありらん文庫主宰。『《写真記録》これが公害だ』など著書多数。早稲田大学時代、足尾銅山鉱毒事件に政治家生命をかけて取り組んだ田中正造の生き方に強く影響を受ける。大学を中退し帰郷。北九州市教育委員会に勤める傍ら、地域の婦人会と北九州市の公害問題に取り組み、37歳で退職、記録作家となる。徹底した聞き取り調査により、朝鮮人強制連行、差別問題、特攻隊の実相など、人々を苦しめた歴史的事実の闇を追及し続けた。記録作家としての活動が、『朝日新聞』夕刊連載の「ジャーナリズム列伝」(2011年6月29日ー2011年7月29日)などで紹介された。
読売教育賞(1967年)、朝日・明るい社会賞(1969)、青丘出版文化賞(1990年)、平和・協同ジャーナリスト基金賞(2007年)ほか受賞。
2017年9月1日肺がんのため永眠。 その壮絶な半生を描いたドキュメンタリー映画『抗い』が全国公開中。

 

森川登美江(もりかわ・とみえ)

1945年長崎県佐世保市生まれ。
北九州大学外国語学部中国学科卒業・九州大学文学研究科博士課程(中国文学専修)修了。各大学で非常勤講師として勤務。1987年、大分大学経済学部 助教授 。2011年大分大学定年退職・名誉教授。2016年、福岡アジア文化センターを福岡市中央区梅光園2丁目23-16東洋企画ビル3階 に開設。2018年3月、記録作家 林えいだい記念ありらん文庫資料室を東洋企画ビル2階に開設。

 

西嶋真司(にしじま・しんじ)

1981年RKB 毎日放送入社。1991年から1994年までソウル特派員。現在は番組制作部門に所属し、「コタ・バル~伝えられなかった戦争」(2011)、「嗣治からの手紙~画家はなぜ戦争を描いたのか」(2014)など戦争を中心とするドキュメンタリー番組を製作。 ドキュメンタリー映画『抗い』(2016) を監督。

 

米本浩二(よねもと・こうじ)

1961年、徳島県生まれ。徳島県庁正職員を経て早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。在学中に『早稲田文学』を編集。2017年3月現在、毎日新聞記者。石牟礼道子資料保存会研究員。著書に『みぞれふる空――脊髄小脳変性症と家族の2000日』(文藝春秋)。『評伝 石牟礼道子――渚に立つひと』(新潮社)で第69回読売文学賞[評論・伝記賞]を受賞。