福岡・けやき通り & 箱崎の小さな本屋

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about 箱崎

「梨も柿も放生会」
 箱崎といえば、秋の訪れをつげるこの大祭を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。700を超える露店が立ち並ぶ華やかさと、今では全国的にも希少となった見世物小屋などが醸し出す一種独特な雰囲気。この期間、箱崎宮は150万を超える人出で賑わいます。 
 もう一つ、箱崎のシンボルといえば九州大学箱崎キャンパスの存在でしょう。明治44年の設立以来、この町は学生街としての発展を遂げてきました。祭りの期間とはうって変わり、普段の箱崎はしっかりと落ち着いた生活感に溢れた町です。
 その九州大学の移転が進行する現在、この町は大きな転機を迎えています。かねてからJRの高架事業による駅舎の移転やそれに伴う道路の再編成、また生活スタイルの変化などにより、人の流れは変わり、昔からの町が機能しにくくなっている状況。そこに加えての九大の移転決定は、町の人達に大きな打撃を与えたようです。商店街は空洞化が目立ち、空き店舗や廃屋は町の流れをさらに分断しているように見えます。
 ですが一方では、そんな隙間から流れこむように、新らしい活力の芽生えも感じます。 例えば、この町を長年支えてきた老舗の次世代達。彼らは町に対する強い気持ちで、現状を打開しようと様々な試みを行っています。
 また最近、箱崎に移り住んで来た、いわばヨソ者たちの活動も目立ちます。彼らも、この町に魅力を感じ、自由な感性で古い物件などを活用し、町に刺激を与えています。ともに共通するのは、何処かの代替としてではなく、あえてこの町を選んでいる、というところではないでしょうか。
 日本中で都市化による問題が浮き彫りになるなか、各地で様々な町興しプロジェクトが進められています。ともすれば、上段に構えたプロジェクトありきの活動が多く見られるなか、自然発生的に地域への愛情を伴った動きが生まれている箱崎には大きな可能性を感じます。またそれは、それだけの魅力をこの町が有している、ということの証ともいえるでしょう。
 実際に暮らす箱崎では、町の人達の人情というものを強く感じます。学生街の特徴かとも思いますが、いたる所で大切に祀られている、小さな庚申塚や供養塔などを見ると、もっと深く根ざしたこの町の気質なのかもしれません。想えば、箱崎宮の門前町としての歴史は千年を超えるのですから。
 今後、受け継がれてきたものに新鮮な息吹がどのように絡み合い、そこからなにが生まれてくるのか、丁寧にレポートしていきたいと思っています。  (大鶴)