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4/2(火)〜4/14(日)山本美里 写真展「透明人間 –Invisible Mom– 」を開催します。

 

ブックスキューブリック箱崎店2Fのギャラリーにて、写真家・山本美里さんの個展を開催します。

 

※山本さんが4月6日(土)に1日在廊されることになりました。
15時から1時間、お話会を行います。
参加費:1000円
申込:電話でお申込ください(電話番号092-645-0630)
   

 

 「お母さんがお願いします」の一声で、

 この世界の大半の問題は解決できるように出来ている。

 

これは昨年12月に刊行された写真集『透明人間 Invisible Mom』(タバブックス)の冒頭にある一文です。

 

著者の写真家・山本美里さんの第3子は重度の障害とともに生まれ、痰の吸引や経管栄養などが日常的に必要な「医療的ケア児」です。通学する特別支援学校には親が付き添い、校内での待機が求められます。

 

緊急時以外にはとくに何もすることがなく、「気配を消してください」と求められ、毎日6時間、週のほとんどを“黒子”として、子どもの“背景”になって過ごす日々。

 

「透明人間」となってしまった山本さんは、通信制の大学に通って写真を学び、「私はここにいる」と言わんばかり、自分自身にカメラを向けて撮り始めました。

 

するとそこに写し出されたのは、「医療的ケア児」をめぐる福祉や教育の問題のみならず、毎日の生活にもがき苦しみながらも「今」を楽しく生きようとする山本さん自身の姿、そして、誰かの人生のために「透明人間」になって生きざるをえない、見えない母親たちの存在でした。

 

 “見えないもの”とされているすべての母親たちへ——

 

テーマとは不釣り合いに、つい笑ってしまう、明るくユーモアのある写真の数々に囲まれながら、「透明人間」となって生きている一人ひとりの「私はここにいる」の声を感じていただけますように。

 

たくさんのご来場を心よりお待ちしております。

 

 

山本美里 写真展「透明人間 –Invisible Mom– 」

 

会 期:2024年4月2日(火)~ 2024年4月14日(日)

時 間:平日 11:00~17:00

     土日祝11:00~18:00

     *月曜定休

     *入場無料

会 場:カフェ&ギャラリー・キューブリック

     福岡市東区箱崎1-5-14ブックスキューブリック箱崎店2F

     (JR箱崎駅西口から博多駅方面に徒歩1分)

 

 

【作家プロフィール】

山本美里(やまもと・みさと)

1980年東京都生まれ。写真家、医療的ケア児の母。2008年、妊娠中に先天性サイトメガロウイルス感染症に罹患した第3子が障害を持って生まれ、「医療的ケア」を必要とする子の親となる。その息子が特別支援学校小学部に入学するとともに、週4日の校内待機の日々が始まる。2017年に京都芸術大学通信教育部美術科写真コースへと進み、息子に常に付き添う自分自身を被写体にした写真作品の制作を開始。同学学長賞も受賞した一連の作品を2021年11月に『透明人間 Invisible mom』として自費出版すると、大きな反響を呼ぶ。全国各地を展示と講演で回るさなか、2023年1月に櫛野展正氏による記事「隠された母親たち」がウェブ版「美術手帖」に掲載。それをきっかけに、『透明人間 Invisible mom』を再構成・再編集した本書を出版。同年、別作品で「MONSTER Exhibition 2023」優秀賞受賞。現在も医療的ケア児と特別支援学校の保護者付き添いをテーマに作品制作を続けている。

Website: https://inbisiblemom.studio.site/

Instagram: @m.yama_moto

 

 

【書籍情報】

 

『透明人間 Invisible Mom』

 

学校も病院も社会だ。付き添いもケアも家事も、社会活動だ。

お母さんは、社会人だ。社会を変えられる。——山崎ナオコーラ

 

表舞台には出てこない、「透明にされた」母親たちの思いを伝える

手段こそが、山本さんの写真であり言葉なのだろう。——櫛野展正

 

■写真・文 山本美里

■寄稿:山崎ナオコーラ、櫛野展正

■2023年12月8日発売

■タバブックス刊

■A5判・並製・144ページ

■ISBN978-4-907053-66-6

■定価:本体2400円+税

http://tababooks.com/books/invisiblemom 

 

 

【山本美里さんによるステートメント】

 

透明人間 –Invisible Mom–

 

私の息子は重度心身障害児です。

また、日常的に痰の吸引、経管栄養、人工呼吸器管理などの「医療的ケア」が必要な「医療的ケア児」でもあります。

現在彼は、東京都の特別支援学校に通っています。

 

特別支援学校にはそれぞれ看護師が配置されていますが、一部の医療行為が学校での医療的ケアとして認められていないため、看護師にはそれを行なうことができません。

そのため、そういった医療行為の必要な子どもの保護者は、それらを行なうために学校に付き添わねばなりません。

私はその付き添いをしなければならない保護者の一人です。

 

現在この国には約2万人の医療的ケア児が存在していると言われています。

全国の国公私立特別支援学校の通学籍には6411名の医療的ケア児が籍を置き、そのうち351名の保護者が学校に付き添いをしています(2022年度文部科学省調べ)。

 

また、医療的ケア児はスクールバス乗車ができないため、保護者が毎日学校へ自主送迎します。自主送迎や学校付き添いができない家庭の子どもは、教員が自宅を訪問して授業を行なう訪問学級に籍を置き、通学することができません。

 

医療的ケア児を育てる家庭では、主に母親が子どものケアをするために就業などを諦めて家庭に入っている状況が多くあります。

24時間。365日。ただ子どもの世話に追われる毎日。

私の人生はいったいどこにいったのだろう。

子どものことは大好きだけれど、それとこれとは別だ……。

決して不幸なわけではないのです。ただ、ちょっとだけ、こんなはずじゃなかったと、自問自答してばかりの日々の中で、私は写真に出会いました。

 

カメラのファインダーをのぞいている間だけは、そこに本来の私の姿がありました。

「母親」を演じているもう一人の私を被写体にして撮影を始めると、そこには私が普段見ているのとは少し違った景色が広がっていました。

今まで私が感じていた違和感は私だけが感じていることではなく、世の中の多くの母親が、世代や子どもの障害の有無にかかわらず、一度は感じたことのある感覚なのではないだろうか。

その景色は、そんな気づきを与えてくれました。

 

どんな子どもでも当たり前に学校に通えるようになること。

子どもたちがどんなふうに産まれてきても、私たち母親が自分たちの人生を諦めずに生きられる社会になることを願って、この作品を制作しました。

医療的ケア児とその母親が抱える「今」を知ってください。

 

そして、最後に。

この作品が、私と似たような「今」を経験をしている人たちに届きますように。

あなたも私も、確かにここに存在している。

 

山本美里