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「出版ニュース」 2007年3月中旬号 (文・青田恵一)

「癒しの書店  ブックスキューブリックを体感する」 

青田恵一(書店・出版コンサルタント)

 いいものを見せてもらった。というより、店が醸し出す雰囲気に癒されてしまった、というほうが実感に近いだろうか。博多の赤坂から歩いて数分、お堀のかどを曲がり、こざっぱりした通りに出て、繊細な感覚の「本」という看板を見つけると、すぐ「ああここだな」と察知できた。-ブックスキューブリックという書店。以前から、ぜひ拝見したいお店だったが、今日、ようやく訪ねることができた。  入り口の椅子に、ポストカードや地域のパンフレット。入るとき、この本屋さんはそういう店なのだなインプットされる。天井からさがる照明が、淡く美しい。大きさも、20坪ぐらいには見えるが、サイトによれば13坪に過ぎない。いい店は、なぜか広く感じられるのである。  雑誌から入ると、普通は棚のところが2段にわかれ、誌名が確認できるよう逆に平置きされている。ドリル棚みたいな陳列法だ。いきなりの知恵に心をわしづかみされた。  なかほどの新刊台は、表側・文芸系と裏側・社会系にわかれている。海外文学に柴田元幸さんの本がズラリ、大きい店に負けない品揃えといっていい。エンドに、POPつきの高倉美恵著『書店員タカクラの、本と本屋の日々。・・・ときどき育児』(書肆侃侃房)を発見。  新刊台の奥に目を移すと、そこは文庫棚。基本は著者別だが、同じ著者棚でも選択法がちがう。チョイスしたら、たまたま文庫だったというような、そんな選び方だ。サブ的に、文庫のテーマ棚もある。カクテル棚か・・・・・。  文庫にかかわらず、本はなんらかの基準でセレクトされている模様。売れ行きプラス、なにか。なにかってなに?と聞かれると、それは、ちょっと言葉にはしにくい。使命とかミッションとかいうと、どこかちがってしまいそうだが、でもこれだけはいえる。そんなに重くないが、でもキチンとしていて、すごくしっかりしたものだ、と。  ここで歩みをフト左方向に転じ、そのまま先頭までいくと、園芸などの生活書の棚。といって実用書だけでなく、関連する雑誌やムック、エッセイ、随筆といった読み物や写真集なども、自然のうちに溶かし込まれている。ミックス味。面見せや陳列やフルカバー展示が多く、アピールにも説得力がある。棚を眺めていくと、京都やパリの本から、環境もの、民俗学、宮本常一、阿部謹也・・・・・。うーん、すごいなぁ。なんてったって13坪の店なのだ。心理や教育、呼吸の本、免疫、スローライフも。またまた、うーん。人口問題とか、ビジネス書にも力が入っている。さらにうーん。うーんがもう止まらない。編集や雑誌にからむ書籍も多い。分散しながらだが、山本容子さんとか、著者で揃える本も目立つ。  一通り拝見して感じたのは、そうか、この店のコンセプトは、13坪ながら、いや13坪だからこそ、人生というか、人の生き方を提案しているのではないか、ということだった。  入り口右側の一角は“なにか”を発信していて、入ったときから気になっていた。最後に寄ると、これがなんとなんとアートブックゾーンであった。この規模にしてこんなに広いゾーンを持てるのだろうか、いや持てない(と勝手に自問自答)。ところがこれが厳然と存在しているのである。それは建築書からはじまり、芸能、映画、写真、デザインとつづく。でここにプレゼンテーション!そして、音楽、詩、詩画集、絵本、児童書、女性エッセイという組み立てなのだが、流れるような美しさに、ためいきひとつ。その中央平台には話題書が並ぶ。珍しい本ばかりだ。  全体として女性向けというムードが漂う。そういえば看板もセンスよかった。この「ロゴや看板、ブックカバー、しおりなどのデザインは全てグラフィックデザイナーの岩下健作さん」によるものとのこと。おしゃれな街のおしゃれな書店。我に返ってフト見渡すと、店内のお客さまは、私以外はすべて若い女性客であった。  そんなわけで、今度のコンパリゾンは、いまひとつ不完全燃焼だった。いつかもう一回来なくっちゃ。それにしても、書店がこういう気持ちとスタンスで売場を作れば、この業界、まだまだなんとでもなると思ったのだが、これが一番の成果でした。