福岡・けやき通り & 箱崎の小さな本屋

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「あっちこっち」 2001年11月号

「旅のアラカル」

福岡市内の中央区にある「けやき通り」はクルマの往来は激しいが、歩道には並木の緑が多く、歩くと気持ちがいい。
先日、仕事の合間にぶらぶらと歩いていたとき、その一角に面白い本屋さんを見つけた。坪数三十坪ほどで、知らぬ間に通り過ぎてしまいそうな小さな店だ。
最近は、ブック戦争と呼ばれるくらい、大型店舗が郊外や都心に進出している。そんな店に入ると、陳列されている書籍のあまりの多さに、目がくらんでしまい、いつもじっくりと探すこともなく、早々に立ち去ることが多い。
この店では、入り口を入ったときから、なぜか落ち着いた雰囲気が感じられた。店内をくまなく回り棚から取り出して、ゆったりした気持ちでページをめくって本選びができる。

十年くらい前に、友人から教えられてとても感銘を受けた本がある。木村尚三郎氏の『「耕す文化」の時代』だ。以来、第二弾が出されるのを心待ちにしている。本屋に立ち寄るたびに必ず探していた。
その本を、たまたま入ったこの店で見つけることができた。まるで「ここにいるよ!」と呼んでくれているかのように、私の目の前に現れた。『美しい「農」の時代』だった。
感激のあまり、オーナーの大井さんとしばらく立ち話をしてしまった。彼が言っていた「本も出会いですよ」という一言がとても印象に残った。
大型書店は別として、書店に並ぶ本を見れば、オーナーの人間性や姿勢が分かると言われる。
なるほど、出会いは、「人と人」ばかりではない。
まさに、それを実感できた一日だった。