福岡・けやき通り & 箱崎の小さな本屋

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第1回「やおきパン」

 早朝5時、バス通りから細い路地を入ると、まだ薄暗い中、やさしいパンの香りが漂ってくる。
寝ぼけ眼の近所の人や、通勤、通学の人達がそれぞれお目当てのパンを手に朝の町へと戻っていく。目の前の公園には焼きたてをほうばっている人の姿も、、、、
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 こう書いているとヨーロッパの街角が目に浮かんできそうですが、さにあらず。これは箱崎にある「やおきパン」というお店のお話です。
 やおきパンとの出会いは3年前、ちょうど箱崎への引越し準備をしていた頃。そもそもパンが大好きで、例えばヨーロッパなどを旅すると、行く先々の街で、まずは美味しいパン屋を捜し歩く。
これは!というパンに出会い、その店に通いつめるのは飛びきりの喜びだ。
 もちろん日本でも、そんなパン屋さんを捜してみたが、これがなかなか難しい。美味しいと評判の店をまわり、○○産小麦使用、醗酵バター使用なんてものをいただいてみても、、なにかグッとこない。どこか違和感というか、、、まぁ気候とかも違うしね、と半ば諦めていた時、フと気づくと毎日のように食べていたのがこの「やおきパン」だった。
 冒頭でも書いたように、開店はパリにも負けない朝の5時、100円未満のパンがほとんどで、シュークリームなんかは40円、これなら近所の子共達もガンガン食べれる。もちろん○○産小麦も醗酵バターも謳っていないが、食べてみれば、精一杯丁寧に作られているのを感じることができる。
 見た目は大きくても、中はスカスカ、空洞です、なんてパンが多い昨今、どのパンもきっちり端まで具が詰まってるし、いかにも日本的な柔らかパンも地元の人達から長年支持されてきた味なわけです。
 ここのパンを食べていると、ヨーロッパで味わった喜びというのは、数値化できる味オンリーによってもたらされたわけではなく、そのパンがもたらす幸せ感みたいなもの、地元の人たちにとって当たり前で、でも大切なもの、説得力というか、根ざしてる感じ、リアルフード、ピースフード。そんな存在に出会えた喜びだったんだと気づかされる。
 
 フランス風なオシャレイメージでもなく、かといってレトロさを売りにするわけでもない、ひたすらフラットなこのお店に、本場の匂いを感じるのはそんな理由からだと思う。
 そのたたずまいから「懐かし系」なんて形で紹介される事も多いが、きっとそんな括りをつけた途端に見えなくなる部分にこそ、この店の魅力はあると思う。
 翻ってそれは箱崎という町全体にもいえることで、このコーナーでは不思議な刺激で毎日を楽しませてくれている、この町の魅力を丁寧にひろっていきたい。   (大鶴)
やおきパン
福岡県福岡市東区箱崎1-30-7
TEL092-641-5844