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「Subクリップ」 2003年新春特別号 

上昇企業の仕掛け人にインタビュー

「ターゲットは、“好奇心旺盛な知的な大人です」

「街の書店」の”新しい形”を提案するブックスキューブリク代表・大井実さんに直撃 「街の書店」新しい姿とは?

大型の書店が次々オープンする中、小さな「街の書店」が一軒また一軒と姿を消しています。その数は全国で年間1000店以上。そんな時代の流れに逆らうかのように、去年けやき通りにオープンした「街の書店」があります。15坪ほどの書店ですが、小さい店ならではの魅力を前面に打ち出し、大きな反響を得ています。新しい「街の書店」の姿を予感させてくれるブックスキューブリック代表の大井実さんに話を聞きました。

開店の経過は?

もともとは、東京でイベント関係の仕事をしていたんですよ。その後、会社を辞めて、一年ほどイタリアで過ごし、日本に戻ってからは、展覧会を手伝ったり、文化新聞を発行したり、地域の文化活動に関わっていました。本屋を始めたのは、家を継ぐとかではなく、純粋にやりたいと思ったから。そういう人間って、最近では珍しいらしいですね。ウチのような小規模の本屋は年間1000件以上が廃業していて、始めようという人はほとんどいない。なぜ本屋かというと、まずは、文化に関わる仕事をやりたかった。もうひとつが、今まで大きく派手な仕事をやってきた反動といいますか、送り手と受け手の距離がもっとも近い、地道な活動をしたかった。そこで浮かんだのが本屋だったんです。それから開業のために準備を始めたんですが、調べるほどに、あぜんとなりまして(笑)、「諦めたほうがいい」という否定的な意見がほとんど。ただ、全国を見回すと、小さくても、成り立っているユニークな「街の本屋」が存在しているんです。そういう書店を訪ね歩いて、心の支えにしました。 

勝算はあったのですか?

今の書店業界は、規模で勝負という流れで進んでいます。天神などはその典型で、全国でも有数の激戦地。しかしいろいろ調べみたところ、大型店中心の流れも行き詰っているのでは、という結論に達しまして。結局は出版社主導なわけですよ。一冊本があたると、関連本が山のように出てくる。出版社がどんどん本を出すものだから、本を並べるために規模を大きくしなければいけない。それが本当に読者にとっていいことなのか。例えば、大きな本屋に行くと疲れるでしょう。たっぷり時間があるならいいのですが、現代人は暇じゃない。実は、「好奇心旺盛な知的な大人」が、好みそうな本は絞ることができるのです。必要のない本を大胆に削ってしっかりセレクトすれば、20坪ぐらいのスペースで十分やれると確信しまして。後は、立地とオペレーションの問題ですが、じっくり調査した結果、結局4年も掛かりましたが、時間をかけただけに、蓋を開けたとたん、あれってことはありませんでしたね。あと、うちでは本の取り寄せに力をいれているんですが、ネットの存在も大きなポイントでした。ネットを使った取り寄せ機能を充実させることで、構えは小さいけど背後に無限の在庫をかかえることができます。このオペレーションを確立できたことで規模が小さくても十分に戦えると思いました。

開業して反応はどうですか?

本の売れ行きを見ると、広告関係、デザイン系の方々など、都会の生活が好きな人が多いですね。女性と男性の割合は大体7対3。女性向けでは、料理やインテリア系のグレードの高い本が売れています。男性の割合が少ないのですが門戸を閉じているわけではなく、サラリーマン層向けにビジネス書なども置いています。目指すところは、マニアックな本を揃えた専門書店ではなく、あくまでも地域に根付いた「街の本屋」。ただし、コミックだけは置かないことにしています。

「街の本屋」の目指すものとは?

実際にあったことですが、近所のお母さんが、「ウチの子です、よろしくお願いしますね」と子供を紹介に来ました。これは、個人店だからこその出来事で、チェーン店ではありえません。このような地域に根付いた書店のよさをもっと高めてゆきたい。それと、作りたいのは居心地のいい「場」なんです。私自身、本が好きだったという以上に、むしろ、本屋という場所が好きだった。インクのにおいとか、クーラーの効いた店内で立ち読みしている時間とか、社会人になっても、待ち合わせはいつも本屋でした。本屋の居心地のよさというのは、他の店では味わえない独特のものですよね。そういう雰囲気作りを大事にしていきたい。あと、「大人のための本屋」を標榜していますが、子供たちが、大人になって行きたいと思ってくれるような店になりたいですね。

結論 地域に根付いた「大人のための街場の本屋」