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祝!白石一文さんが山本周五郎賞を受賞されました。

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け〈上〉

 福岡市東区出身の作家白石一文さんが、このたび、「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(講談社刊)で第22回山本周五郎賞(新潮文芸振興会主催)を受賞されました。
 白石さんは、直木賞作家の白石一郎さんを父に持ち、2000年に「一瞬の光」でデビュー。06年の「どれくらいの愛情」では直木賞候補になられています。昨年出版された「もしも私があなただったら」の文庫版では当店主が解説を担当させていただいたご縁もあり、今回の受賞は大変嬉しいニュースとなりました。
 受賞作「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」は、政治、経済、宗教、社会問題などの書物や演説などからの引用と物語が重層的に重なる複雑な構成で上下巻の大作。まさに矢のように次々に放たれる引用と、息もつかせぬストーリー展開によって、知らず知らずのうちに、混沌とした現代をいかに生きるべきかという白石さんの問いに読者も引きずり込まれてしまうような作品です。ミステリー系の私小説的な作品にばかり注目が集まりがちな昨今、ストレートで古典的とも言えるテーマを圧倒的な力量で描いた傑作です。ぜひ、この機会にご一読をお勧めします。