福岡・けやき通り&箱崎の小さな本屋 ブックスキューブリックIndependent Small Bookstore in Fukuoka since 2001

「西日本新聞」 2009/3/30(朝刊)

「本屋は街のコミュニケーション装置」

情報発信は大事な役割
 福岡市中央区のけやき通り沿いにある「ブックスキューブリック」はオープンから9年目。着実にファンを増やし、個人経営ながらも不況の波を感じさせない。その人気を支えているのが店主・大井実さんの、本好きのつぼを押さえた絶妙なセレクトやディスプレーだ。「本の数がどんどん増えて、お客さんもどれがいいのか選びにくい時代ですし、忙しくてゆっくり探して回る時間もない。ただ本を並べるだけでなく、日々押し寄せる情報を整理したり、お薦めをセレクトしたり、こちらから情報を編集して発信することが本屋の重要な役割だと思うんです」
 大型書店などでは売れ行きによって出版社から配本されるシステムが一般的だが、ここでは大井さんが自ら選書し、注文する。小さな書店だからこそできることだ。「仕入れをおろそかにしないのは、魚屋さんでも八百屋さんでも他業界では当たり前。うちは専門書店でなく、ごく普通の本好きな人がお客さんなので、より充実した毎日を送るためのヒントになる本、日々の知的好奇心を満たしてくれる本などを選ぶようにしています。いくら自分の思い入れが強くても売れない本を残しておくことはできないので、販売データは必ずチェックして仕入の参考にします。お客さんは本屋づくりのパートナーですから」
 明確にジャンル分けされない同店の本棚を見ていると、次から次へと目移りしてしまい、思いがけない世界へと誘われる。「つながりのインスピレーションや意外性はディスプレーの大事な要素」と大井さん。本を入れ替えたり、見せ方を変えたりと陳列もどんどん変えていく。きれいにまとまり過ぎない雑多な感じが残る方が「まるで陶器市のように掘り出し物を見つけている気分になれる」という。

大人が集えるカフェを
 ブックスキューブリックは2008年10月に2店舗めとなる箱崎店をオープンし、大井さんの新しい試みが始まった。けやき通り店より少し広い65平方メートルほどの店内を、雑誌と合わせて約1万冊の本が埋め尽くす。2階には野菜ソムリエのゴトウタカコさんによる料理教室「ベジキッチン」が入り、水曜から土曜までは焼きたての野菜ベーグルが並ぶ。また、念願だったカフェとギャラリーを併設し、本を買った後はオリジナルのブレンドコーヒーやベーグルサンドを味わいながらじっくりと読書に浸れる空間をつくった。私物の書籍や雑誌も持ち込んで読めるようにした。
 「もともと本屋って気軽に立ち寄れる場所ですし、いろんな世代の人々が文化を共有できる身近な窓口。昔は地域に根差した個人商店がいくつもあって、地元の人々のコミュニケーションが生まれたものですが、今ではほとんど消えつつあります。ならば本屋に大人が集える空間=カフェがあったら面白いんじゃないかと思って。本とコーヒーって相性もいいし、知らない人同士が集い、好きな本を通して自然と会話が生まれるように、本屋が街にコミュニケーションをつくり出す装置になるといいですね」
 かつてイベント業に携わったこともあり、何か情報を発信したいという思いは人一倍強い。カフェでの夜の営業も始めたほか、今後はコンサートや展示会などのイベントも予定。古さと新しさが入り交じる箱崎で、コミュニケーションを生み出す街の書店を目指す。

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